記事番号:214 ベンダ必見!あなたのクライアントを犯罪者にしないために  この記事も、あるSNS会員の寄稿。  後期高齢者医療の被保険者資格は、高齢者医療確保法第50条のとおり、大雑把に言えば住所と年齢で決まる。  ただし、適用除外や施設入所者に対する特例があるので、免許証で受診可能などと言うのは大きな間違いであるが、住所と年齢が資格管理の上で大きなファクターを占めることには変わりない。  年齢はともかく、住所という概念は厄介である。  高齢者の医療の確保に関する法律には住所に関する規定はない。  規定がない以上、住所というのは民法第21条に規定する各人の生活の本拠のことであり、これは住民基本台帳法(住民票)上の住所と同義である。  だから、多少の例外はあるとしても、後期高齢者医療の被保険者台帳は住民基本台帳(住民票)を元に作成されている。  具体的に言えば、広域連合は健康保険法等の一部を改正する法律の附則第35条や高齢者医療確保法第54条、高齢者医療確保法第138条などを根拠として、LGWANやイーサネットなどの伝送で、市町村から住民票情報の提供を受けている。  この市町村から提供された公簿を元に、広域連合は後期高齢者医療の被保険者台帳を作成しているわけだ。  ところで、住民基本台帳や外国人登録の事務を理解するのはかなり難しい。  例えば、ある日に住民票が2か所に存在するということが現実に起こりうることをご存知であろうか?    ある人が午後3時に引越しをしたとしよう。  午後3時までは前の住居に住所があり、午後3時以降は新しい住居に住所があるわけで、1日というスパンで見たときにその日に限って住民票が2か所に存在するのは全く正しいことなのである。  同様に、ある日に世帯主が2人存在するのも全く正しい話である。  ところが、賦課期日などの特殊な基準日に、住所が2つ存在するなどというのは、電算処理からすれば甚だ具合が悪い。  そのため住所や日付を一意とするための判断処理が必要である。  この判断はまさに資格の認定であり、広域連合の権限である。  市町村が行なうべきことではない。  市町村はただ、広域連合の求めに応じ、広域連合が判断を行なうためのありのままの資料を提供するだけである。  あってはならないことだが、広域連合の資格認定や保険料賦課の作為的操作を目的として、提供する資料の内容を改変することは、刑法第157条に該当する可能性が高い。 刑法第157条  公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。  例えば「日付がずれていればエラーにならないですよ」というQAが世の中に存在していたとしても、それは電算システム上の仕様の話であり、それを行なうことが合法か否かを示したものではない。  重箱の隅と言うなかれ。  公簿上一意ではなく広域連合の判断が必要、ということは、  「本人にとって望ましくない判断」がなされた場合にクレームが付く可能性があるということだ。  下世話な言い方をすれば、「望ましくない判断」が行なわれたプロセスを明らかにせよ、という被保険者からの要求が発生する場合がありうるということである。  もちろん、広域連合への提供情報等も本人からの申請であれば情報公開の対象となりうる。  そこで、実際の住民票とは異なる内容の情報が提供されていたことが明らかになった場合、どういうことになるかは想像に難くない。  ベンダ諸氏に置かれては、貴社のパッケージが犯罪者量産ソフトにならないよう、十分注意されたし。