#Silhouette Extra Tale 改訂版 第7章「救われた心」前編 !v27=2 !v35=2 !v36=2 !wait60 友達を助けるのに、理由はいらない……。 それは当然だと思ってたし…… 助けられるって、ずっと信じてた……。 でも……現実は違った……。 4年前……僕は友達を助けられなくて、 自分の無力さを思い知った……。 その瞬間、僕の中で何かが砕け散って…… 信じてた道まで、失ったんだ……。 ……。 !wait60 だけど……。 それでも……僕は、立ち止まらなかった。 死んだ友達の"こころ"を引き継いで…… 今も、こうして誰かを助けようとし続けてる……。 ……確かに、おかしな話だよね。 助けようとするのは真似事で…… 自分には、きっと誰も助けられないって 思ってるはずなのに……。 砕けた自分の"こころ"を抱えたまま…… \s何を信じて、何を助けようとしてるのかな……? !wait100 \f[22]Silhouette Extra Tale 第7章 \s\f[40]救われた心 \s\m[46]\f[32]-Relief- !se(System)キー3 !wait120 !bgmタイトル画面 !wait100 !mvマジカルパレス !wait1 !mvnil !wait5 !mvマジカルパレス !wait2 !mvnil !wait5 !mvマジカルパレス !wait60 @130 ……。 ここは……。 !wait40 @0 \c[6]「シシトさん……」 @130 えっ……? @0 \c[6]「シシトさん……私の声が聞こえますか?」 @130 ……女神様? @0 \c[6]「私は元の世界から、意識の世界にいる  あなたに語りかけています……」 \c[6]「現在、あなたはセトさんの意識の表層……  入口にあたる部分にいるはずです……」 @130 これが、意識の世界か……。 ……。 @131 ……まるで天国みたいな場所ですね。 どこ見ても、白いモヤばっかり……。 @0 \c[6]「意識とは、とてもデリケートなものです……」 \c[6]「自分の内側を他の者に見透かされぬよう、  常に厚い霧で覆われています……」 \c[6]「意識の奥、深層へ向かうためには……  その中へ入っていかなくてはなりません……」 @130 なるほど……。 @0 \c[6]「それと……後ろを見てもらえますか?」 @130 後ろ……? !wait60 @131 ……。 なんか、すっごく\r[眩,まぶ]しいんですけど……。 @0 \c[6]「そこが、意識の世界の出口です……」 \c[6]「こちらの世界へ戻ってくる時は……  光の先へ進めば、すぐに戻れます……」 \c[6]「いつ戻るかは、シシトさんの自由です……」 @131 戻るの、意外と簡単なんですね……。 @0 \c[6]「ですが、油断しないでください……」 \c[6]「意識の世界は、その人の理念によって  作り上げられた未知なる領域……」 \c[6]「どこに何が存在して……  どうすれば移動できるのか……  私にも……全く見当がつきません……」 \c[6]「意識の表層を抜けてしまえば……  もう、私の声も届かなくなるでしょう……」 \c[6]「これ以上の助力は……不可能です……」 @130 いえ、ここまでしてもらえただけでも、 もう十分すぎるくらいです。 @134 ……ありがとうございます、女神様。 @0 \c[6]「あまり無茶はしないでくださいね……」 \c[6]「もし……何か身の危険を感じたり、  『送還』を使用する事態だと判断したら、  すぐ戻ってきて構いません……」 \c[6]「シシトさんは、私たちにとっても  大切な存在ですから……」 @130 ……大丈夫です。 セトを助けたら……必ず戻ります。 @0 \c[6]「……そうでしたね」 \c[6]「では、これで私からの話は以上です……」 \c[6]「他に、聞いておきたいことはありますか?」 @131 うーん……特に無いですね。 あんまり時間もなさそうなんで、 さっそく行ってきます……。 @0 \c[6]「分かりました……」 \c[6]「もし、何か聞きたいことがありましたら、  ここで私を呼んでください……」 \c[6]「シシトさんの無事を、お祈りしています……」 !wait80 @130 ……。 !wait30 とは言ったものの……。 一体……僕、どこに向かって 進んでけばいいのかな? !wait40 @131 ……まっ、考えても仕方ないか。 とにかく、まず行ってみないとね……。 !wait15 !se(Action)学内歩き @0 !wait60 @130 ……。 やっぱり……何も見えないか……。 !wait20 @1 目の前に広がる、真っ白な霧の壁……。 少し近づいただけで足元が見えなくなって、 あんなに眩しかった出口の光さえ、 霧の向こうに\r[霞,かす]んでる……。 このまま進んだら、自分の今いる場所まで 完全に分からなくなりそうだけど……。 @130 ……。 !wait60 !se(Action)学内歩き !wait35 !se(Action)学内歩き !bgs../se/(Action)学内歩き !wait15 @1 それでも……僕は、前に歩き出した。 @131 (……他に方法なんて無いもんな) (この様子じゃ、どう進んだって  無事に戻れる保障もなさそうだし……) @1 それに、今は戻ることを考えてる 場合じゃないんだ……。 早く、セトを助け出さないと……。 !wait40 @130 ……\s助けないと、か。 確かに、そうなんだけどね……。 !wait20 @1 助けたいから、ここまで来た…… その気持ちは間違ってなんかない……。 でも、助ける方法なんて分からないし…… 正直、助けられる自信もない……。 僕は……誰も助けることができない、 無力な人間なんだから……。 @134 ……いつもそうだ。 僕の近くで人が助かった時は、 僕以外に助けようって思った誰かが 決まって側にいた……。 だから、助かってたのに……。 @1 冬村さんの時はジェイクさんがいた…… リス君やリセットの魔法もあった……。 僕だけ何もやってないクセに…… みんなに混じって、自分も助けられた つもりになってたんだ……。 それが……今回は、完全に僕一人。 何もできない人間が助けに行っても…… 結果なんて、とっくに見えてる……。 このままじゃ、きっと……。 @130 ……\s分かってるよ。 あの時と何も変わらないまま…… それで、全部おしまい……。 助けようとすることさえ、二度と できなくなっちゃうかもしれないんだ……。 @1 極端な話、セトを助けに行かなければ 僕が命を落とす心配はない……。 今はダメでも……生きて、頑張ってれば、 そのうち誰かを助けられる可能性だってある。 誰だって自分の命は大事なんだ…… \s普通に考えれば、そっちの方が妥当だよね。 ……\sもっとも。 @131 (そんなの……絶対しないけどさ) (セトは、僕の友達なんだし……) @1 矛盾……してるよね……。 助けられないって思ってるクセに、 友達だからとか、頼まれたからとかで、 それでも助けようとして……。 ……\sなんでかな? なんで……僕、そうまでして 助けようとするんだろ? そんな事……できっこないのに……。 @131 ……。 !wait60 @134 ……\sやめよう。 いくら考えたって、キリ無いや……。 @1 とにかく、まずはセトを見つけなきゃ……。 !wait80 !se(Action)ジュゴー @0 !mvマジカルパレス !mvnil !bgm !bgs !wait12 @130 ……っ! !wait10 @133 な……なんだっ!? 急に、真っ暗になって……。 !wait30 @1 \f[16]\c[5]「──じゃない、ちょうど良かったわ」 @130 ……えっ? @1 物音一つしない真っ暗な世界……。 どこかで、誰かの声が聞こえた気がした……。 !wait20 @131 ……\s気のせいかな? 誰もいるはずないのに……。 !wait40 @1 \f[20]\c[5]「ほらこちら、中学校のとき一緒だったでしょ?」 \f[20]\c[5]「……えっ?」 @130 ……っ! @1 違う……気のせいなんかじゃない。 しかも……今の声、もしかして……。 !wait20 @133 ……あっ! !wait60 !bgm神秘 @400 @132 セ……セトーッ!? @1 突然、僕の背後に姿を見せた声の主……。 間違いなく……セト本人だった……。 !wait15 !se(Action)跳ね @133 セトッ! セトなんだよね!? よかった……無事だったんだ! @400 \c[5]……。 @130 ……でも、なんでこんな所に? 誰かと話してたみたいだけど……。 一体、今のは……。 @400 \c[5]……。 @131 ……\sあれっ? !wait20 @1 セトは、僕の質問に何も答えない……。 こっちを気にする素振りも見せずに、 ずっと前だけ見続けてる……。 ……\sまさか、リセットじゃないよね? だったら、真っ先に攻撃されてそうだし……。 @131 ……。 !wait40 お〜い、もしも〜し。 ちゃんと聞こえてるか〜? !wait30 !se(Action)ミス @400 @130 ……っ! !wait5 !se(Action)跳ね @132 わ……わわっ!? @1 思いがけず、僕の右手が空を切る……。 セトの肩に手を置こうとした瞬間…… \s体を、すり抜けてしまった……。 @131 な……なんだよ、これ……。 立体映像とか、そんなワケないし…… \sこの子、どっから見たって……。 !wait30 @1 \c[5]「あ、セトか」 @134 うん、セトで間違いないはずなのに……。 !wait30 @131 ……\sへっ? !wait20 @100 \c[5]懐かしいなあ、全然変わってないね。 @132 なっ!? @1 振り返り、思わず言葉に詰まる……。 セトの視線の先にいたのは…… 見た目も、声も全く同じ……。 @132 えええええーっ!? ぼ、僕が……もう一人いる!? @1 おまけに、その隣には……。 !wait10 @250 @132 ア、アルバートォォォ!? な、なんで、君まで……! @250 \c[5]……。 @131 ……。 !wait20 この姿を見て全く無反応か……。 やっぱり、見えてないんだな……。 !wait30 @1 \c[5]「犬山さんの昔の先輩……なの?」 @130 ……えっ? !wait20 @410 !se(Action)跳ね @132 ふっ……冬村さん!? そんな……さっきまで部屋に いたはずじゃ……! !wait20 @1 \c[5]「名字が\r[犬山,いぬやま]で名前がセトちゃん……よね?」 @130 ……はっ! @400 \c[5]はい、名前はSetって書きます。 @131 ……\sまさか。 この妙に聞きなれた声は……。 !wait30 @111 \c[5]シシトー、この子もう高2になってるのよー。 !se(Action)ビシッ @132 やっぱり母さん!? なんで……どういう事!? @1 セトの体はすり抜けちゃうし…… もう一人の僕は出てくるし……。 アルバートに、冬村さん…… \sさらには、ウチの母さんまで……。 意識の世界って、一体……。 !wait20 @110 \c[5]そういえば後ろのあなた、 昨日駅で見た気がするわよ? @410 \c[5]えっ……私ですか……? @400 \c[5]冬村さん、今日転校してきた ばっかりですよ。 @130 ……えっ? @1 今日……転校してきた・・・…? 僕たちが\r[ここ,アクアフロート]に転校してきたの…… もう、1ヶ月も前の話じゃ……。 !wait20 @130 ……っ! @1 いや、待てよ……。 そういえば……こんなシチュエーション、 前にも、どっかで見たような……。 !wait60 !se(Action)ジュゴー @0 !mv住宅地 @133 ……っ! @1 それを思い出そうとした瞬間だった……。 真っ暗だった世界が急に明るくなって…… 目の前に広がる、見慣れた風景……。 僕の……ウチの前だった……。 @130 ……。 !wait30 そうだ……。 見たことあると思ったら…… これ……あの時と、全く同じだ。 !wait20 @1 1ヶ月前……僕が、薙島高校に 初登校した日の帰り道……。 アルバートと一緒に歩いてきたら…… ウチの前で母さんがちょうど立ち話してて、 それが、セトと冬村さんだった……。 その時、実際に話した会話の内容…… \s過去の出来事が、再現されていたんだ……。 @130 でも……なんで、そんな物が……。 !wait30 @400 \c[5]あっ、私、塾ありますから、これで。 @131 んっ? @110 \c[5]はーい、じゃあねー、バーイバーイ。 @100 \c[5]じゃあまた。 !wait15 !se(Action)学内歩き @1 そう言って、足早に去っていくセト……。 冬村さんとアルバートも家に帰っていって、 話し合いは、そこで終わりになった……。 @130 ……そういえば、あの時も こんな感じで解散したんだっけ。 僕も、母さんとすぐウチにあがって、 そのまま晩ご飯を食べて……。 !wait30 !se(Action)学内歩き @400 \c[5]……シシト先輩か。 @130 ……っ! @1 予想外の声に思わず顔を上げる……。 すると、そこには立ち去ったはずのセト…… \s誰もいない通りを一人で歩いてる……。 いつの間にか……場所が移動していた。 !wait10 @400 \c[5]中1の春休みに先輩が引っ越して 以来だから、大体、2年半ぶりくらいか。 \c[5]ホントに久しぶりだったな……。 @130 ……\sセトの、声が聞こえる。 @1 でも、独り言を言ってるんじゃない……。 セトの声が、頭の中まで響いてくる…… うまく言えないけど、そんな不思議な感じ……。 一体、これは……。 !wait10 @403 \c[5]……今日、なんだか、いい日だな。 \c[5]冬村さんとは友達になれそうだし…… シシト先輩にも会えたし……。 \c[5]明日から、色々楽しくなりそう……。 \c[5]……。 @404 \c[5]……っと、いけない、いけない。 \c[5]これから塾なんだから、ちゃんと 気持ち切り替えないとね。 \c[5]もうひと踏ん張り……ファイトッ! !wait10 !se(Action)学内歩き @1 スタスタ ……。 !wait40 @130 ……。 !wait40 もしかして……。 今の、セトが実際に考えてたことが 聞こえていたのかな……? !wait10 @1 仕草や表情とも一致してたし…… たぶん……そうだったんだと思う……。 でも……どうしてなんだ? 過去の場面とか、心の声とか…… \sこんな、記憶に残っているかどうかも 微妙そうな出来事が……。 ……\s記憶? !wait20 @130 ……っ! @1 記憶として残ってる光景だから…… こっちから手を加えることはできない……。 誰にも聞こえない心の声だって…… 本人には、記憶の一つとして残ってる……。 そして……今、僕がいる場所は……。 @130 ……そうか。 ここは、セトの意識の世界……。 その人の理念っていうのが…… 記憶とか、思ったり感じたりしたことを 意味してるんだとしたら……。 @1 それなら……全部、説明がつく。 セトの持ってる、過去の記憶や思い出…… \sその全てが詰め込まれた世界……。 それが……意識の世界の正体なんだ。 !wait20 @131 ……なるほどね。 記憶なんて人それぞれだし、 本人さえ忘れてるような思い出も いっぱいあるもんな……。 確かに、女神様の言ってた通りだ……。 !wait40 @130 ……。 とにかく……セトについてってみよう。 セトの記憶が作り出した世界なら、 何か分かるかもしれない……。 !wait5 !se(Action)跳ね !wait15 !bgs../se/(Action)学内歩き !wait5 @1 単純な理由だけど…… ヒントが無いよりマシだもんね。 見失わない程度の距離を保って、 一応、バレないように……。 @131 (……って、これじゃまるで  ストーカーやってるみたいだな) (ま、この際、仕方ないか……) !wait60 !bgs !se(Action)ジュゴー @0 !mv住宅地 !mvnil !wait12 @130 ……っ! @1 だけど、そう思ったのも束の間……。 周りの世界が再び真っ暗になって…… セトの姿も……その中に消えてしまった……。 @131 ……マズいな。 せっかくの手がかりだったのに……。 一体……どうすりゃいいんだ? !wait40 @1 \c[2]「シシト先輩、明日には引っ越し  しちゃうんですよね……」 @130 えっ……? @1 \c[4]「うん、そうだね……」 \c[4]「明日の今頃は……もう飛行機の中だよ」 \c[2]「……そうですか」 \c[2]「なんか、寂しくなっちゃいますね……」 \c[4]「いやぁ、どうかなぁ〜?」 \c[4]「案外……トラブルに巻き込まれなくなって、  セトには都合いいんじゃないの?」 \c[2]「そ……そんな事ないですよっ!」 \c[2]「どんな事でも大騒ぎになっちゃうのは、  先輩のとりえじゃないですか!」 \c[4]「……とりえって言うのか、それ?」 @130 ……\sまた、僕たちがいる。 !wait20 @1 暗闇に浮かんだ二人の姿…… 今よりも、ちょっとだけ幼く見える……。 たぶん、昔の記憶なんだろうけど……。 ……\sいや。 この会話は、確か……。 @130 ……。 !wait40 僕が、中学校から転校しちゃう 前の日の会話だ……。 最後に街で買い物してたら、 セトとばったり出くわしたんだっけ……。 !wait30 @1 \c[1]「シシトー!」 @131 ……んっ? @1 すると、そこへ僕の名前を呼びながら 駆け寄ってくる一つの人影……。 それは……当時、まだ黒髪だった……。 @130 ……\sリョウヘイ? !wait15 @1 \c[2]「き、岸先輩……?」 \c[4]「リョウヘイ、そんなに急いでどうしたの?」 \c[1]「おいおい、どうしたのはねぇだろ……」 \c[1]「ダチがもうすぐ引っ越しちまうってのに、  慌てない奴なんているかよ……」 \c[4]「そんなもんかなぁ〜?」 \c[1]「ってワケで、ゲーセン行くぞ!」 \c[4]「……へっ?」 \c[4]「いや、僕、今買い物を……」 \c[1]「とにかく行くぞっ!!」 !se(Action)ビシッ \c[4]「……っ!」 !se(Action)ズシャアアー \c[4]「あだだだだーっ!!」 \c[4]「リョウヘイ! 痛い、痛いからっ!!」 \c[2]「ち……ちょっと、岸先輩!?」 \c[2]「いきなり何してるんですか!?」 \c[1]「どうせだから、セトも一緒に来いよ」 \c[1]「このままお別れなんてイヤだろ?」 \c[2]「えっ……?」 \c[1]「まっ、ついて来りゃ分かるって……」 \c[2]「……はぁ」 \c[2]「分かり……ました……」 \c[4]「……とりあえず、手離してくれない?」 \c[4]「ちゃんと自分で歩くから……」 \c[1]「逃げんなよ?」 \c[4]「逃げないって……」 !wait20 @0 !mv !se(Action)学内歩き !wait12 !se(Action)学内歩き !wait12 !se(Action)学内歩き !wait12 !se(Action)学内歩き !wait12 !se(Action)学内歩き !wait70 @130 ……\s行っちゃった。 ……。 !se(Action)跳ね @132 って……のんびり眺めてる 場合じゃないよっ! 早く追いかけないと……! !wait20 !se(Action)ジュゴー @0 !mvゲームセンター @130 ……あっ。 @1 けど、追いかける必要は無かった……。 再び場面が切り替わって…… そこに現れた、見たことある風景……。 中学校の近くにあるゲーセン…… \s"僕たち"は、そこにやって来ていた……。 !wait40 \c[1]「よし、着いたぜ」 \c[4]「やれやれ、ホントに来てしまった……」 \c[2]「すごい音ですね……」 \c[1]「ゲーセンなんて、いつもこんなだぜ」 \c[4]「……で、どうしてここに連れて来たの?」 \c[4]「まさか……時間ギリギリまで遊ぶ気?」 \c[1]「ま、それも悪くは無いんだけどな……」 \c[1]「今日の目的は……こいつさ」 \c[4]「……えっ?」 @130 あれは……。 @1 \c[2]「これって……プリクラですか?」 \c[1]「おうっ」 \c[1]「シシトってさ、中学校には大量に  置き土産を残してるだろ?」 \c[1]「でも……オレたちだけの思い出って、  あんまり残ってないじゃねぇか」 \c[4]「……まあ、確かに」 @131 (好きで残したんじゃないけどね……) @1 \c[1]「そこで、だ」 \c[1]「シシトが引っ越しちまう前に、  一つくらい思い出を残せないかって  色々と考えてみたんだ」 \c[1]「その時に思いついたのが……」 \c[2]「それでプリクラなんですね?」 \c[1]「ああ、そうだ」 \c[1]「安上がりで時間もかからねぇし、  うってつけの方法だろ?」 \c[4]「さすがはリョウヘイ、ゲーセンの  常連者らしい発想だね……」 \c[4]「でも、今時プリクラはなぁ……」 \c[1]「それを言うなよ、オレだって  恥ずかしいのは覚悟してたんだ……」 \c[1]「でも、男同士でならともかく……  セトも一緒なら、特に問題ないだろ?」 \c[4]「そういう問題なのか……?」 \c[1]「安心しろ、プリクラ代はオレが出してやる」 \c[4]「いや、そうじゃなくてさ……」 \c[2]「……\sそうですね」 \c[2]「シシト先輩、せっかく来たんですから  みんなで撮りましょうよ」 \c[4]「え〜?」 \c[1]「ほら、セトも乗り気だし……なっ?」 \c[4]「……」 \c[4]「はいはい……」 !wait30 !se(Action)学内歩き @0 !mvゲームセンター !wait40 @130 ……。 !wait60 @0 !mvnil !se(System)キー3 !mvゲームセンター !wait10 !se(System)ピロロロリン @1 『撮影が完了しました』 『このまま、しばらくお待ちください』 !wait60 ジジジジ、ジ…… \c[1]「……\sうっし」 \c[1]「結構、いい感じに撮れてるな……」 \c[4]「そうだね」 \c[2]「でも……シシト先輩、なんだか  表情が硬くないですか?」 \c[1]「まっ、シシトっぽくていいんじゃね?」 \c[4]「ははっ……」 \c[1]「おっ、そうだ」 \c[1]「どうせなら……もう一枚撮っとくか?」 \c[1]「次は、お前ら二人だけでさ」 \c[2]「ええーっ!?」 \c[4]「いや、一枚あれば十分でしょ……」 \c[1]「なんだよ、つまんねぇ返事だな……」 \c[1]「んじゃ……とにかく、これ分割するぜ?」 \c[2]「あっ、はい……」 \c[4]「お願いしま〜す」 !wait60 @130 ……。 あのプリクラ撮った時の記憶か……。 やっぱり、懐かしいな……。 !wait20 @1 半ば強引にゲーセンまで連れて来られて、 勢い任せに撮った、記念の一枚……。 当時はイヤイヤだったけど…… 僕たちだけが知ってる思い出として、 今も、忘れずに覚えてる……。 ……\s僕だって、そうなんだ。 セトにとっても……すごく印象深い 思い出だったんだろうな……。 @134 ……そうだね。 たとえ、記憶喪失になっても…… リセットに意識を奪われたとしても……。 セトの持ってる思い出は、意識の中で ずっと消えずに残ってるんだ……。 @1 そう……何も消えてなんかいない。 この記憶をずっと辿っていけば…… \sいつか、きっと意識の深層に辿り着く……。 そこに……セトが、いるはずなんだ……。 !wait20 @130 ……。 よし……。 !wait30 !se(Action)跳ね @133 だったら……どんどん行くぞっ! !se(Action)ジュゴー !mvnil !wait10 @1 暗闇の先に、わずかに見えた可能性……。 それを信じて、僕は闇の中を 全力で走り始めた……。 !wait40 @0 !se(Action)ジュゴー !mv301教室 @1 \c[5]「みなさん、入学おめでとうございます」 \c[5]「今年一年、みなさんと一緒に  楽しい学校生活を……」 !wait15 !se(Action)ジュゴー !mvnil @0 !mv !wait5 !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !wait15 !se(Action)ジュゴー !mv全体マップ @1 \c[2]「あれが、アクアフロートか……」 \c[2]「昔、テレビで話題になってたけど……  まさか、自分が住むことになるなんて……」 !wait15 !se(Action)ジュゴー !mvnil @0 !mv !wait5 !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !wait15 !se(Action)ジュゴー !mv塾 @1 \c[5]「最優秀成績者……犬山セト殿」 \c[2]「は……はいっ!」 !wait15 !se(Action)ジュゴー !mvnil @0 !mv !wait5 !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !wait15 !se(Action)ジュゴー !mv自宅 @1 \c[3]「セト、誕生日おめでとう」 \c[2]「うん、ありがとう、おじいちゃん!」 !wait15 !se(Action)ジュゴー !mvnil @0 !mv !wait5 !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !se(Action)学内歩き !wait4 !se !wait60 @133 はぁっ……\sはぁっ……\sはぁっ……! @1 現れては消えて、また走って…… ずっと、その繰り返し……。 次々に浮かび上がる記憶の一場面を 横目で見ながら、意識の世界を駆け回った。 ……\sだけど。 @133 く……くっそ……。 一体……あと、いくつ見ればいいんだ? @1 息切れするまで走ったけど、深層に 近づいてる気配は全くない……。 ……\sでも、当然か。 記憶なんて、いくらでも存在する…… \s僕が今まで見てきたのは、その中でも ほんの一部に過ぎないんだ……。 ましてや、これ全部見ないと深層まで 辿り着けないなんていったら……。 !wait30 !se(Action)跳ね @132 ……ああ、もうっ! 休んでなんかいられないじゃん! @1 とにかく前へ……今は、それしかない。 進み続けてれば……いつか、きっと……。 !wait60 @0 !se(Action)ジュゴー !mv住宅地 !wait10 @133 はあっ……はあっ……! つ……次は……。 !wait30 @110 \c[5]あらシシトじゃない、ちょうど良かったわ。 \c[5]ほらこちら、中学校のとき一緒だったでしょ? @400 \c[5]……えっ? @131 ……\sあれっ? @1 これ……確か、最初に見たはずの……。 って、ことは……。 !wait40 @131 ……\sもしかして。 僕……戻ってきちゃったの? !wait20 @1 確かめるまでもない……。 進んでるつもりでいたのに…… 実際は、同じ場所を回ってただけ……。 何も……変わってなかったんだ……。 @131 ……\sなんだよ。 こんなの、いくら進もうとしたって 全く意味ないじゃん……。 @1 結局は、いつもと変わらない展開……。 できるって勝手に信じて、僕は何も……。 @131 ……。 !wait60 @134 (……\sいや、違う) (ここは意識の世界なんだし、普通に  進もうとしたってダメなんだ……) (もっと、落ち着いて考えないと……) @1 決め付けるのは……まだ早い。 そもそも、僕は全く進んでないんじゃなくて、 進んでたらここに戻ってきたんだ……。 今まで出てきた記憶の出来事…… そこに、きっと意味がある……。 ただ印象深いだけじゃなくて…… \s順番とか、共通点とか、きっと何か……。 !wait40 @131 ……\sうーん。 まあ、セトにとっては、どれも印象深い 出来事なのかもしれないけど……。 なんか、ありきたりって言うかな……。 @1 思い出としては定番だけど…… 目立って記憶に残るような出来事でも 無い気がするんだよね……。 ……\s僕が異常なだけか? @131 入学式とか卒業式の思い出なんて、 あんまり覚えてないもんな……。 思い出したくないような記憶ばかりで、 いい思い出なんて、ほとんど……。 ……。 @130 ……えっ? !v36=1 @1 思い出したくない……記憶……? @130 そういえば……確か、冬村さんは……。 !wait20 !mvnil @410 \c[5]もちろん、全部いい思い出 ばかりじゃありません。 \c[5]姉さんとはケンカもしましたし…… 怒られたり、泣かされたりもしました。 \c[5]イヤな思い出や、辛い思い出も…… いっぱい記憶に残ってます……。 @0 !mv !wait40 !mv住宅地 !wait30 @130 ……\sそうだよ。 印象に残るような記憶って…… \s何も、いいことばかりじゃないんだ。 でも、今まで見てきた中には そんなのなかった……。 @1 思い出したくない記憶ほどよく覚えてるし、 だからこそ、印象も強くなる……。 誰にだって言えることだ…… \sもちろん、セトも例外じゃない……。 ここがセトの意識の中……記憶の世界なら、 イヤな思い出や、辛い思い出だって きっとあるはずなのに……。 @130 ……だとしたら。 一体、その記憶はどこに……? !wait60 !bgm !se(Action)ジュゴー @0 !mv住宅地 !mvnil !wait12 @131 ……えっ? @1 周りの世界が再び暗闇に包まれる……。 少しだけ、雰囲気が変わった気がした……。 !wait80 @0 \> \